ファストフードで出世ができるか

私は、料理研究家だけではなくエッセイストとして、文章を通じた交流会などを企画しております。その活動の中で、多くの企業や公的機関のトップの方々、メディア関係者だけでなく、普通の主婦、サラリーマン、学生といった、多様な方々と交流をさせていただいております。 そんな私が、「食を通じて見た成功と出世」について語らせていただくのが、このコーナーです。1回読みきりになりますので、ぜひお気軽に、楽しみながらお読みください。

 ある会社から接待を受けた。セッティングされた席には、担当者とその上司、私と私に同行したマネージャー、その他に親会社の部長と取締役たちが顔を連ねた。 初めて顔を合わせる親会社の方々と私。食事の席でゆっくりとお話しを…というつもりだったのだが、シャレた創作中華料理のそのお店、個室でもなければ円卓でもない。総勢10名という縦長のテーブルなので、全員での会話はとうてい無理。 しかも隣のテーブルまで距離もないので、商品名や企業名を大きな声で話題にすることもできない。結局、自分の前と隣に座った数人と、当たり障りのない会話をすることしかできなかった。


接待に必要なものは、料理の珍しさやイベント性のある場所ではない。きちんと顔を見せ合い、話のできる空間と、接待される側に気を使わせない料理の選択だ。 できれば、個別に供される食事が良いだろうし、鍋料理や中華のようにシェアしなければならない料理なら、それをサービスしてくれる人がついてくれる場所が良いと思う。 担当者が全員の分を取り分けることができるならともかく、それだって、嫌がる人もいるはずだ。そういう気遣いが、接待を成功させるのだ。


 後日、その担当者に、普段は、どんな食事をしているのか聞いてみた。「ほとんどファストフードです」という答え。きちんとしたレストランや料亭で食べることはないのかと聞くと、そういう時間がもったいないし、同じお金を使うなら遊ぶことに使いたいと言う。だから、仕事をしながらハンバーガーをかじるか、丼もののチェーン店で安い定番メニューを頼むのだと。


 私は、若い担当者ならばそういうこともあるかもしれないと思いつつ、 彼にきちんとした店の指導をできない中年の上司について、大変憂い を覚えた。中年になっても、接待の店のチョイスができないのは、社 会人としてかなりのマイナスだろう。誰も、口に出して言ってはくれ ないことだけに、自腹を切ってでも学ぶことは必要だと思う。 


例えば、夜には敷居の高い料亭やレストランでも、ランチタイムなら 給料の範囲内でその店の雰囲気、サービス、得意な料理を知ることが できる。ほんの1時間弱で、接待に必要なノウハウの片鱗が学べるのだ。 そういう意味で、ランチタイムは、お得な社会勉強時間だと思わねばならない

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